中洲
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ちょっとしたことを見ても気がつくように、日本は様々な点において独自のユニークな文化をもっており、それは世界でもよく知られています。これは、島国に住む日本人の国民性、もっと正確に言えば、島に住んでいるからこその国民性に起因していると考えることが出来ます。嘘か本当か意見が分かれるかもしれませんが、興味深いことに、実はこの現象の一例が福岡の中洲にも見られます。中洲は周囲を那珂川に囲まれている細長い島で、福岡の他のエリアとは異なる雰囲気をもっているのです。また、光きらめく天神と賑やかな博多の間に位置し、まるでトロピカルカクテルに浮かぶお洒落な傘のように、那珂川の小波の上に浮かんでいます。もし天神がショッピングに行く場所で、博多は旅行へ出かける場所なら、中洲は福岡の人たちが楽しみに行く場所と言えます。美味しいものを食べたり飲んだり陽気になったりと、福岡の人たちは楽しんでいます。
初めはいくつかの狭い通りに困惑してしまうかもしれませんが、中洲自体はそれほど大きくなく、しかも川に挟まれているため、案内するのはとても簡単です。中洲川端駅は地下鉄に接続していますが、代わりに、天神から明治通りを通ってアクロス福岡を通り過ぎて中洲まで歩くことをお勧めします。広い橋を渡っていくと、そこから中洲の魅力的な川岸の風景を見ることができます。橋の一番端まで行くと、すぐに中洲の落ち着いた雰囲気を感じることが出来るでしょう。通りの店も少ないので、天神のような騒がしい雰囲気がありません。(と言っても、これからご紹介するように、中洲でいい買い物が出来ないということではありません)
右手の角には、古い大洋映画劇場が見えてきます。この映画館は1964年に開館し、市内の他の場所に比べてレトロな雰囲気を残しています。明治通りを歩き続けると、両脇に細い道がいくつもあり、様々な種類の食べ物屋さんが見えてきます。
右側にある大きなドンキホーテまで来ると、すぐ目の前には中洲の周りを流れるもう一方の那珂川が突然現れます。中洲は本当に狭いエリアです。目の前の川を渡ると、大きな博多リバレインモールもあります。もし地下鉄で中洲へ来たなら、この辺りへ出てくることになります。
もし夜に中洲へ遊びに来て、何か買って帰りたいなという場合は、7階建ての博多リバレインモールがいいでしょう。モールの後ろには、福岡の素晴らしいホテルの一つである豪華なホテルオークラがひっそりと建っています。これら2か所の間には、短いですがリバレイン通りとして知られている屋根のある歩道があり、素敵なアンティークショップやコーヒーショップなどがあります。福岡で一番有名な劇場である博多座そばの並木道には、居心地のいい喫茶店もいくつかあります。博多座は歌舞伎や能を上演する劇場として最もよく知られており、大理石でつくられた印象的な柱の周りで、着物姿の人たちが行ったり来たりするのに気づくかもしれません。道を渡ると、もう一つ文化を楽しめる素敵な場所があり、それが黄色い外観の福岡アジア美術館です。博多リバレインモールから道を渡ると、川端商店街の入り口です。もしキャナルシティへ行くために中洲川端駅に来たのなら、この屋根のついた長い商店街を通っていくことが出来ます。
でもここで振り返って、橋の向こう側に見える中洲をもう一度きちんと見てみましょう。もし中洲の一番良い姿を見たいと思うなら、明るいうちではなく、日が沈んで暗くなり、道いっぱいにライトやその影が溢れてからです。中洲は夜のまちなのです。お店が開き、道は人込みでいっぱいになり、輝くネオンの光が川面でゆらめきます。この時が、中洲にあるたくさんの橋や川岸から写真を撮る一番いい機会です。キャナルシティが見える東側の川岸は長年のお気に入りです。
よく知られている中洲の華々しい一面を経験するには、北西から南東へ中洲中央通りを歩くといいでしょう。酔っぱらっているようにくねくねと曲がったこの狭い通りは、中洲の中心部まで続き、まるで、夜の中洲でよく見かける酔客のようです。
バーは様々な種類のものがあります。ほぼすべてのビルの複数のフロアに、面白い名前や情緒あふれる名前のバーがたくさん入っています。外国人観光客は、バーは居酒屋よりも高いと覚えておかなければなりません。バーでは座っただけでも‘テーブル料金’を取られてしまいます。また、店の外にメニューは置いてありません。もし日本人の同僚や友人に連れて行ってもらうなら心配しなくても大丈夫でしょう。福岡でいいバーを自分で見つけるのはご褒美みたいなもので、もしかしたら人生でやっておきたいことのリストに入るかもしれませんね。また、華やかなドレスを着た女性たちの写真が貼ってあるお店もありますが、おそらくそこはホステスバーで、客が好きなホステスとお酒を飲みながら話したり、ひょっとしたら歌を一緒に歌ったりも出来るところです。もしかしたら、福岡のホステスバーの多さにとても驚くかもしれませんね。ホストバーもありますよ。中洲の他の場所では、会話を楽しむだけではなくそれ以上のことを提供している場合もあるので、慎重に選ぶことが大切です。
すべての人に適している場所ばかりではありませんが、中洲が危険でいかがわしい場所と思って欲しくはありません。もちろん子ども向けの場所ではありませんが、男女問わず、カップルでも中洲の夜を楽しんでいます。とても清潔で(日本国内の他の場所のように)、金曜の夜でさえ、問題なく中洲を通ることができます。交番もあるので安心です。中洲は狭いエリアなので、川を渡ったり、前述した喫茶店へ入ったりすることで、簡単に中洲の喧騒から離れることもできます。また、素晴らしい食事処がたくさんあるので、ささっとハンバーガーを食べたくても、本格的な和食を食べたくなっても大丈夫です。有名な屋台は川岸にいくつもあり、福岡の本場の味を楽しめます。
中洲の最北端と最南端にはそれぞれ中島公園と清流公園があって、どちらの公園でも、昼夜問わずにリラックスした空気と、川に面した綺麗な景色を臨むことができます。
ホームシックになっている人でも、中洲にはアイリッシュパブ・ザ・ハカタハープやブリティッシュパブ・モーリスヒッポなどもあります。
興味をそそる場所がたくさんある中洲ですが、ときに観光客に見落とされてしまいます。天神と博多の間を通り過ぎる人たちには、那珂川の水の流れがヴェールのように中洲を覆い隠しているのかもしれません。しかしここには、楽しみや喜び、つい寄り道してしまうようなものがたくさんあります。昼間はゆったりと落ち着いた雰囲気で喫茶店や文化を楽しめ、夜は鮮やかなネオンや活気に満ちた場所です。那珂川の流れを感じながら、中洲のまちを自分の足で歩いて良さを発見してみましょう。